ジョバンニの頃
背の高い人を気にしてばかりいる通勤ラッシュ あなたがいそうで
忘却とドライフラワー想い出の処理をするならいづれやさしき
巻き戻しボタンを押してみますから何も知らない自分に戻って
春風に吹かれことんと落ちてゆく眠れる君よ そのままでいて
誰にでもやさしい君が何気なく差しのべた手だ そう誰にでも
一度あることは二度ある三度あるだから信じてしまう運命
初恋の人の愛したシャーロック・ホームズいまだ読めずに図書室
友人と食べる昼食おしゃべりのために来ているような学校
黒板が消されて次の解説が始まるという永遠を見る
世界中沈没してもかまわない あなたも私もおんなじ水屑
本当の幸いについて考える宮沢賢治のジョバンニになる
お日様に届くようにと手を伸ばし 空を見上げる 向日葵の花
アオイソラ テニスボールを追う君の真白きシャツはくっきりと映ゆ
教科書のカドを揃えて入れているきちんと感も私は知ってた
発車ベル流れるホームもう一本ずらして君を待てば良かった
大荷物抱えて降りる神立駅 ふと見上げれば白い満月
毎日はどう足掻いても現実で変わりやしない止まりもしない
たぶんきっと絶対忘れぬフレーズの「教科書見せて」をアンコールしたい
長く長く炒めていればキッチンに玉葱よりも透明の吾
野っぱらを走れる時間は儚くてとんぼ追い越せよく遊べ子ら
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これまでに詠んだ短歌をピックアップして、一つの作品としてまとめました、
せめて、このくらいはしたかったんです。
どれもこれも、まったく違う時期に詠まれたものです。
そしてすべて、10代の頃のものだということも、特記しておきます。
copyright(c) Suzuro
さよなら、僕の宝物。
さよなら、僕の10代。
わすれないよ。